2011年6月18日土曜日

昼飯は座って食べるな!

昼飯は座って食べるな! 【著】市村洋文 サンマーク出版


元野村証券の証券マンだった著者が仕事に対する考え方や取り組み方を綴っている。全体を通して人間関係を大切にすることが重要だということを主張しており、また仕事の厳しさも教えてくれている。

第1章「就業時間は、プレー時間」
著者が野村証券に就いて間もない頃のことから始まり、いかにして1日に40枚集めたのかや仙台一の高額納税者である共呉服の販売会社社長から1億円もの前金を受け取ることができたかについて書かれている。特に印象に残った言葉は、「就業時間はプレー時間。昼飯を休んでゆっくり食べているやつは試合中に休むのと一緒だ」という言葉であり、熱意をもってやればできることを根気強くやり続けることが必要であると述べている。また、「自分のためではなく相手のために服を着る。常に完璧な服装でいつも戦闘態勢でいるべきだ」という言葉も印象的だった。

第2章「名刺1枚には、1000億円の価値がある」
名刺の大切さを強く述べている。名刺をコピーして日付ごとに管理する。そうして知り合った人との関係は切れないよう年賀状を送る、記念日には必ず花を贈る。そうして一生ものの人間関係が続く人持ちになれれば、お互いに助け合える人が増え、そしてまた相手にかけた情けは回り回って結局自分に帰ってくるのである。

第3章「リスクマネジメントよりラックマネジメント」
リスクをマネジメントするのと同様に、運をマネジメントすることも大切であると述べている。そして、運とは人がもたらすものであり、運のいい人と一緒にいることで自分にもいい運がやってくる。ここでいう運のいい人とは、愚痴や文句ばかりいう後ろ向きな人ではなく、前向きにチャンスをしっかりつかんで、周りの人に支えられながら進んでいける人のことである。そして自分がそんな人になるためにも、他人の愚痴を言い合うような場所にはお酒の席でも行かない、つらいときは誰かに愚痴をぶつける前に一人の時間を作ってぼーっと空でも眺める、提示された目標に「なぜ?」と訪ねるのはやめて「どのようにして実現させるか?」に思考を切り替えるといったことが述べられている。また、細かいことをきちっとできる人間は大きな仕事もでき、これからも成長していく人であるとも述べている。特に印象に残った言葉は、「雨は自分にだけ降っているのか?しんどいのはみんな同じであり、一人だけ運がいいように見えるやつは一人で努力をしている。そういうやつだけが運のいいときも悪いときも進んでいく」である。

第4章「よく遊び、よく働け」
お祝い事には盛大にお金を使った方が良いと述べている。というのも、交際費は10年後に何倍にもなって戻ってくるという考えがあるからである。人より高い給料というのはその分交際費として使えという意味であり、それは未来への投資であるのだ。

第5章「一生懸命やれば、応援団がついてくる」
著者の失敗体験をもとに、嫌なことから逃げないことの重要性を述べている。著者は顧客に大損をさせてしまったとき、逃げずに誤り誠実を尽くした。その結果、顧客に損を取り返させることができたのである。また、「無茶」と「無理」は違うことであり、「無茶」はするな、でも「無理」はしろと述べている。「無理」をしてでも仕事をなすという気持ちが大事なのである。ここでは、「出資してくれる人を10人集められるか?10人も信用してくれる人がいないのであれば出資はできない。」という言葉が印象に残った。

第6章「成功するための秘訣」
成功するための秘訣として上げられているのは、リスクを負うこと、思いが強くあること、計画は99%成功するよう綿密に立て、さらにその上でうまく行かなければ柔軟に変更すること、家族を大切にすることである。「つねに夢を持ち、変わらぬビジョンを語り続けていなければいけない。たとえ周りの人が去り、業績が思うように伸びなかったとしても、そこで夢までも挫折させてはいけないのです。」、「自分がいかに人に支えられ、助けられて生きてきたかということです。自分のビジネスも、すべて人とのよき出会いによって成立してきた。人との出会いこそが私を支え、つらいときも乗り越えることができました。」という言葉が特に印象に残った。


全体的に人間関係の大切さを再認識させられた。というのも、著者は証券マンであり、人間関係が仕事の成果に大きく関わる(というかもはやそれがすべてなのか?)ので非常に説得力があったからだ。また、初めにかいたように社会の厳しさを教えられた。著者は厳しいノルマもこなし、魚の餌にもされかけながら、強い意志を持って仕事を遂行していった。自分も体力と強い精神力を持たねば。

2011年6月3日金曜日

考える技術

考える技術 【著】大前研一 講談社


第1章「思考回路を入れ替えよう」
経営コンサルタントである筆者が、論理思考の重要性を筆者の経験と合わせて述べている。筆者曰く、重要なことは分析から十分な仮説を得るだけではだめで、その仮説を自分の足で実際に見て回ることで検証し、結論にしなければならない。

第2章「論理が人を動かす」
本章では、初めに筆者の経験をもとにプレゼンテーションにおいて、いかに聴衆に自分の結論を納得させるかについて書かれている。まず一つのプレゼンに定言をいくつも入れるよりも1つにした方が相手を説得しやすいと述べている。それはやるべきことが1つの方が聞く人の気持ちが動きやすいからだ。また、定言には事実の裏付けが不可欠であり、逆に事実による裏付けがきちんとされていれば相手も納得する。そして、もっとも効果的なプレゼンの構成は、
・まず初めに全体の結論
・業界の動向
・競合他社の動き
・当社の状況分析
・改善機会のための条件
・解決の道
・提言
・実行計画
であると述べている。
後半では、郵政民営化を題材にして、その是非を論理的に検証している。

第3章「本質を見抜くプロセス」
前半ではいくつかの例をもとに、物事の本質を見抜くプロセスを紹介している。ここでは企業売買の際、実際にその企業にはどれ程の価値があるのかや、ジャーナリストが事実を見たり聞いたりしたまま記述していて自ら仮説、検証を行っていないということ(あくまで筆者の記述)、銀行の統合に関する考察が述べられている。後半では、日本企業への提言が述べられている。

第4章「非線形思考のすすめ」
本章では、科学的アプローチと論理的思考の関連性を述べている。何事にも疑問を持ち追求していく姿勢が必要である。そして今の経済は原因が同じであっても結果が同じであるとは限らない複雑形であり、非線形思考をもって様々な方面から疑問をぶつけ考えていくことが必要である。勉強も同じで、何でも自分で疑問をもって考えていく必要があり、答えを与えられ、それを何も考えずひたすら覚え、テストが終わったら忘れてしまうような勉強は何の役にも立たない。

第5章「アイデア量産の方程式」
筆者の考えでは、新しい発想とはひらめき ではなくなぜ?と疑問を持つところから得られる。なぜ?と疑問に感じることを掘り下げて考え、仮説を立てて、それを実際に検証することで新しい発想を得るのだ。

第6章「五年先のビジネスを読み解く」
本章では、初めに土地の値段の下落が推測できなかった人々を例に、当たり前と感じていたり、マスコミや政府が言っているからといって、それらを事実として解釈してしまうことの愚かさを述べ、何事にも疑問をもつことの大切さを述べている。後半ではあるものに関する未来を見通す方法として、それが持つ機能を分解し、それらが将来的にどうなっていくのかを見通すという方法を紹介している。ここでは携帯電話の未来が考察されており、携帯電話の持つパソコンとしての機能や電子財布としての機能をそれぞれ考察している。また、成功のパターンについても述べており、筆者曰く、実際に成功したものごとには、
・事業領域の定義が明確にされている
あれもこれもではなく、必然的に向かっていく一つの方向に特化するということ
・現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について簡潔な論旨の仮説が立てられている
論理的に推論を得るのであって、ただのアイデアとは違う
・自分のとるべき方向についていくつか可能な選択肢があっても、どれか一つに集中する
いくつもある可能な選択肢の中でも、どれがもっとも成功の可能性が高いのかを分析し、優先順位をつける
・基本の仮定を忘れずに、状況がすべて変化した場合を除いて原則から外れない
状況が変化したときに、前提としていた状況が大きく変わらない限り、最初に設定した基本仮定を忘れないことが肝心

第7章「開拓者の思考」
インターネットなどの新しい技術が発明されたことで、様々な事業が新しく生み出され、既存のものを淘汰していっている。この変化によってもたらされた新しい時代はまだ期間が短く、専門家と呼ばれる人がいない。そのため、新技術を取り込んだ新しい事業といった発想パターンが今ほど有効な時代はないといえる。そしてそういったチャンスを得ることができるのは、自分にはまだ経験がないというときにそこを避けて通るのではなく、「とりあえず入ってみよう。何かあるかもしれない。」と思える人である。そして自分の武器である頭脳を常日頃から磨き訓練しておき、誰と会うときでも真剣勝負のつもりでベストを尽くせることが必要なのである。


考察:
本書は、以前に読んだ大前研一氏の著書「下克上の時代を生き抜く即戦力の磨き方」の執筆以前に書かれたものだったため、前回読んだものの中で紹介されていたことがまだ簡単にではあるが本書にも出てきていて少し面白かった。本書は方法論の紹介が少なく(もちろん随所にあったがそれよりも)、どちらかというと実際の例をもとにして大前氏が考察するという部分が多く、自分の考え方の参考になった。大前氏のストイックな姿勢をまじまじと見せつけられ、若者である自分が普段いかに何も考えていないのかということを思い知らされた一冊だった。