2011年7月26日火曜日

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 〜身近な疑問から始める会計学〜

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 〜身近な疑問からはじめる会計学〜  【著】山田真哉 光文社新書


身近な疑問を、会計学の観点から解明し、関連する会計学の知識を解説している。

第1章「さおだけ屋はなぜ潰れないのか? ー利益の出し方ー」
本章のポイントは、「企業は継続することが第一であり、そのために、利益を得る必要がある」ということと、利益は「(利益)=(売り上げ)ー(コスト)」の式で表されるということである。
利益を上げるには、
・売り上げを増やす
・コストを減らす
のいずれかしかない。そして、たとえ売り上げが少なくても、コストをゼロに近づけることができれば、利益を上げることができる。

第2章「ベッドタウンに高級料理店の謎 ー連結経営ー」 
連結経営とは「本業に密接に関わる副業を行うこと」であり、本章ではベッドタウンにある高級料理店を例に、その連結経営に関して述べている。本業だけで儲ける必要はなく、副業で利益を上げれば商売は成り立つ。さらに、本業と副業がバラバラではなく、近い分野を扱っていれば、相乗効果が期待でき、また本業での技術や知識を生かすことができる。

第3章「在庫だらけの自然食品店 ー在庫と資金繰りー」
商品を仕入れ、加工、または卸して販売する企業は、仕入れた段階では支出があっただけであり、そのため仕入れた結果の「在庫」があるだけではその企業にとって損でしかない。また、「在庫の維持費」にコストがかかるため、企業としては、「在庫」は売り切らなくては損しかないのである。その「在庫」を大量に保持している自然食品店の謎に、本章では迫っている。「在庫」の保持には、維持するためのコストがかかるが、最も大きな問題は、「資金繰りのショート」の危険性を生むことである。「資金繰りのショート」とは、「売り上げがまだ入ってこないにもかかわらず、先に仕入れの代金を払わなければならなくなり、現金が足りなくなること」である。これを防ぐために、企業は「支払いは遅く、回収は速く」することを考えている。そのための方法として、「手形」で支払い期限を延ばし、「掛」と呼ばれる「売り上げから代金が入る状態」の期間を短くしようとしている。また、本章の最後では、「家庭における在庫の考え方」として、「必要なものを必要なときに必要な分だけ」が一番お得である、と述べている。

第4章「完売したのに怒られた! ー機会損失と決算書ー」
本章では、「機会損失」という概念と、「決算書」について説明している。「機会損失」とは、「売り上げの機会を逃すこと」であり、たとえば、在庫がなくなって商品が出せないといった場合である。この「機会損失」という概念は、売り上げなどとは異なり目に見えないものだが、こういった概念を考えることにより、より多面的に商売の実態を知ることができる。また、「決算書」とは、売り上げと損失を種類別に記したものであり、これを用いることで、現在の企業や家庭の財務状況を知ることができる。本章では最後に、「数字を使って話すことで説得力が増す」と述べている。

第5章「トップを逃して満足するギャンブラー ー回転率ー」
「(売り上げ)=(単価)×(数)」という永久不滅の法則から、売り上げを伸ばす方法を考察している。数を増やすには「回転率」が重要となる。そして、単価を下げれば、お客の回転率は上がるので、全体として利益を上げることができる。しかし、単価を下げた場合、商品の魅力も必然的に下がってしまうので、リピーターを作ることが難しくなる。その結果、時間が経つにつれて、数は減っていってしまう。そのため、バランスを考えて、その商品に合った単価を設定することが重要となる。また、本章の最後では、「全体を見て分からないものは、ポイントをしぼって見る」ということの重要性を述べている。

第6章「あの人はなぜいつもワリカンの支払い役になるのか? ーキャッシュ・フローー」
本章では、「キャッシュ・フロー」という考え方について説明している。「キャッシュ・フロー」とは、「現金の流れ」のことであり、「キャッシュ・フローが良い」とは、「現金が手元にたくさん残っている」ことである。手元に現金がたくさんあることで、資金繰りを良くすることができる。また本章では、個人が重視すべき指標として、「フリー・キャッシュ・フロー」という概念を提案している。この「フリー・キャッシュ・フロー」とは、「自由に使えるお金の額」のことであり、個人版に置き換えると、「収入から、生活費や保険代などの、必要不可欠な支出を引いた額」のこととなる。これは、生活のゆとりや豊かさの指標として考えることができる。そして最後に、「家計でも、1円単位の計算ではなく、大局をつかむことが大切である」と述べている。

第7章「数字に弱くても「数字のセンス」があればいい ー数字のセンスー」
本章で述べられている「数字のセンス」とは、「物事をキチンと数字で考えることができるかどうか」のことである。すなわち、何事も言葉の表現だけで判断せず、実際に数字の計算に直して考え、分析することができるか、ということである。そして、数字をもとに分析する方法で重要なことは、重要な事柄に対して、1単位あたりの値を出し、比較することである。そして、この値を定期的に抑えていくことである。最後に「数字のセンスを身につける方法」として、
・日々の生活の「ちょっとした数字」にも気を配ること
・あらゆる数字の背後にある「意味」を読み取るようにすること
が挙げられている。

【考察】
身近な例を謎解きの様に読み進めていくうちに、会計に関するエッセンスを学ぶことができた。自分は会計の知識はゼロであったが、専門知識は必要なく、比較的簡単に読むことができた。また、少し難しい説明の部分では、図が描かれていたり、各章の終わりにまとめが記載されていたりと、読者の理解を助けるような工夫が多くなされていた。